大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成12年(ネ)5281号 判決 2000年12月19日

控訴人(原告) X1

控訴人(原告) X2

右両名訴訟代理人弁護士 村田敏

被控訴人(被告) マーシャル諸島共和国

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二1  被控訴人は、控訴人X1に対し、金200万円及びこれに対する平成10年11月15日から支払済みまで年5分の金員を支払え。

2  被控訴人は、控訴人X2に対し金100万円及びこれに対する平成10年11月15日から支払済みまで年5分の金員を支払え。

三  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

四  第二、三項につき、仮執行宣言。

第二事案の概要

一  本件は、控訴人らが、被控訴人との間で、控訴人らが被控訴人における永住権取得をし、その5年後にアメリカ合衆国の永住権を取得することを内容とする合意をし、右手続に必要な対価として、控訴人X1は200万円を、控訴人X2は100万円をそれぞれ支払ったが、被控訴人がその債務の履行をしなかったため、右合意を解除したとして、不当利得返還請求権に基づいて被控訴人に支払った右各金員の支払を求めるものである。

第一審は、外国国家である被控訴人に、我が国の裁判権は及ばないから、本件訴えは不適法であるとして、これを却下した。

二  事案の概要は、原判決「事実及び理由」欄の一に記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴人らが、当審において付加した主張は、別紙「控訴理由書」記載のとおりである。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、控訴人らの本件訴えは不適法であるから、いずれも却下すべきものと判断する。

その理由は、原判決「事実及び理由」欄の二に記載のとおりであるから、これを引用する。

二  控訴人らが当審において付加した主張に対する判断

控訴人らは、本件合意における被控訴人の中核的な債務は、被控訴人に存在する不動産の提供及び居住に必要な利便の提供にあったもので、永住権の付与ではなかったし、かつ、被控訴人の債務不履行によって右合意を解除したことにより、被控訴人が負担することになる控訴人らが右合意に基づいて支払った代金の返還債務は純然たる私法上の債務であるから、このような公権力の行使あるいは是正を求めるものではない行為については、主権免除の適用はなく、いわゆる制限的免除主義をとるべきである旨主張し、東京高等裁判所平成10年12月25日判決(判例時報1665号64頁)も、このことを明らかにしている旨主張する。

しかし、右判決は、駐留アメリカ合衆国軍隊の公務執行中の不法行為について、右のような制限的免除主義を採用したとしても、「日米安保条約に基づく日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」により、アメリカ合衆国は、我が国の裁判権に服すことを免除されているから、我が国の裁判権が及ばないことを明らかにしているに過ぎないものであり、制限的免除主義の採用も、それを定める条約の締結または国内立法によってなされない限り、民事訴訟法等の解釈としてとり得るものではない。

そして、本件において、控訴人らは、請求原因自体において、「永住権募集」の広告(甲二)により本件合意をするに至ったところ、右合意の目的は最終的にはアメリカ合衆国の永住権を取得してアメリカ移住を実現するというにあったとしているものであり、現に、右募集に際して被控訴人商務部が作成した甲八のタイトルは、「マーシャル諸島共和国の永住市民権付案内説明書」とされ、その中で帰化(永住)制度についての説明がなされるとともに、被控訴人国民のアメリカ合衆国への永住についての記載もなされていることが認められるところであって、右によれば、本件合意における被控訴人の債務の中核をなすのは、被控訴人の永住権を付与するという公法的な行為にあることは明らかである。

そうすると、控訴人らの右主張は、その前提を欠き、失当である。

三  よって、本件訴えを不適法であるとして却下した原判決は相当であり、かつ、右訴えはその欠缺を補正することができないものであるから、本件控訴はいずれも、口頭弁論を開くまでもなく理由がないものとしてこれを棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鬼頭季郎 裁判官 慶田康男 梅津和宏)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例